『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』鈴木エイト【読書感想】
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『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』の概要
安倍元首相と教団、本当の関係。
メディアが統一教会と政治家の関係をタブーとするなか、教団と政治家の圧力に屈せずただひとり、問題を追及しつづけてきたジャーナリストがすべてを記録した衝撃レポート、緊急刊行! — 小学館より引用
読書感想
何の誇張もない淡々とした取材ノートのような一冊。
その内容のほとんどが「いつ、どこで、どの政治家が統一教会と接点をもったか」を直接取材して周った記録の列挙である。
個別のケースに感情が大きく動かされることは少ない。
だが、国民の生命財産を守ることが使命であるはずの議員を目指すために、国民の生命財産を脅かす組織と協力関係にある、その事実が168人分もある。
これを前にすると否が応でもさまざまな考えや思いが頭をめぐった。
そこに、関心を呼び覚ますという点において本書の大きな価値を感じる。 統一教会(以降「教団」と記す)は日本を含む7カ国で「国教」となることを目指しているという。
政治に入り込み、権力の庇護のもと人びとの暮らしを破壊するようなカルト教団がすぐそこにある。この事実は恐怖でしかない。
とはいえ教団に限らず権力の威を借り、非合法に、あるいは反倫理的に目的を追求する団体はこの先いくらでも現れるだろう。
国民を守るために行使するための権力が、特定の個人や組織にいいように使われるてしまう現行の選挙システムは大きな問題があるように思う。
そしてなによりも最大の問題は「無関心」である、と痛感する。
マスメディアもそうだし、わたしを含め国民の多くは山上容疑者が弾丸を放ったその時まで、まったくと言っていいほど無関心だったはず。
その間に、教団は政界へと深く食い込み、活動の手を広げていたのだ。
より多くの声を法に反映させるための民主主義において、偏った思想や支配独占を試みる者たちをどのように防ぐかは非常に難しい。
難しいがゆえに向き合い続けなければならないし、そのためには無関心であることがもっとも罪であると思う次第。
本書を読む動機
以降は個人的な話しであり、書籍の内容に直接関係はないので悪しからず。
6月の参議院選挙中に起きた銃撃事件はかなり衝撃的であった。
その後、さまざまな情報が報道されるなか、山上容疑者の家庭環境を知り、事件に対するわたしの関心は一気に高まることとなった。
「他人ごとではない」と感じたからだ。
私の母は良く言えば教育熱心、当事者の私からすれば毒親だった。
心身ともに追い込む教育は相当なものだった。
だが小学生の高学年にもなるとわたしの体もそれなりに大きくなり知恵も回りだす。
身体的な暴力を受けることが無くなったことをさいわいに、適当な嘘と言い訳を駆使し、親の毒牙から逃れることに成功した。
そしてその矛先は妹へと向かった。
バカがつくほど真面目な性格の妹は母の餌食となった。
そして小学校卒業を前に壊れた。
いくつもの精神疾患を抱えるに至ったのだ。
母は問題が起こるとその原因を自分の外に探そうとする。
論理よりも運命を信じる。
そんな人間にとって宗教は悲しいほど相性がいい。
先祖が悪かった、悪いオーラが出てる、信心が足りないなどなど。
どう見ても怪しいお祓いに付き合わされたこともあるし、後日妹から聞いた話で、朝、目が覚めたら知らないおばさんたちに囲まれ見おろされていたなんてこともあった。
母は怪しい宗教にいくつも手を出した。
小さな宗教団体が相手であっても出費はそれなりにかさみ、父と母はよく金のことで口論するようになった。
かなり地獄の様相を呈することとなった家族関係であったが、数年ののち宗教関連とは一切、手を切ることで決着しなんとか破滅は逃れることができた。
だが、今回の山上容疑者の境遇を知ったいまにして思うのは、母が手当たりしだいに手を出したあの中に、もしも統一教会がいたらどうなっていたのか。
想像するだけでも恐ろしい。
年齢も近い山上容疑者は別の世界線のわたしだったかもしれないとの想像から逃れることができないでいる。
もっともわたしは彼のような頭脳や器用さは持ち合わせていないので支離滅裂な何かで終わっていたかもしれない。
長くなったが、他人ごととは思えず、目をそらしてはいけないとの思いで本書を手にとった。 政治と教団の関係が報道のほとんどを占めるのはニュースバリューとして仕方がないのかもしれない。
だが、無名の数多くある犠牲者たちにもっと関心が集まり、われわれ一人ひとりが無関心ではいられないと思える状況をわたしは強く望む。
著者について
滋賀県出身。日本大学経済学部卒業。日大入学後に上京、25歳頃まで音楽活動をしており、その後は不動産関連会社や児童館などに勤務した。2002年頃、報道番組で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による「偽装勧誘」の実態を知ったことをきっかけに、勧誘を阻止する活動を単身開始。新宿や渋谷で行われていた偽装勧誘の現場に割って入ったり、教団施設に乗り込んで勧誘を阻止するといった活動を続けるうちに、信者の心情や被害者を生む構造に関心を抱き、本格的にカルト問題に取り組むようになった。 — 鈴木エイト - Wikipedia より引用
Twitter: @cult_and_fraud